演目のご紹介

籠太鼓(ろうだいこ)

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九州松浦の何某は、領地内の住民の清次が口論の末に相手を殺めたので牢に入れたが清次は牢を破って逃げてしまう。この由を下人から聞いた松浦は、清次の妻を彼の身代わりに捕らえ牢に入れてしまう。清次の妻はあまりのことに狂乱の態を装う。松浦は不憫ながら役目がら夫の居所を明かしたなら解き放ってやると持ちかける。女は知っていたとて、みすみす夫を失うような供述ができようか、まして全く知らないものを白状しようがないと答える。松浦はそのいじらしさに、牢の戸を開いて「出よ」という。女は夫の身代わりゆえ出られぬ、この牢こそ夫の分身と牢の中にくずれおちる。松浦はこのうえは夫婦ともに助けてやるというが、思慮深い彼女はさらに狂乱の態を装い、牢番が時を打つ鼓に打ち興ずる。そして偽りか誠か、我と分かぬまま夫の身代わりに立ってこそ二世の契った仲と牢の中にうずくまってしまう。松浦も哀れを催し、真実、夫婦ともに助けると言い、女ははじめて夫は筑前の宰府のしるべに身を寄せているよう、と明かす。松浦は父の13回忌に当たるゆえ、すべてを許そうと心を解くのであった。