演目のご紹介

熊坂(くまさか)

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旅の僧が美濃の赤坂にさしかかったとき、別の僧に呼び止められ、今日はある者の命日だから弔いを頼むと言われ、その僧の庵室に導かれる。見ると仏像はなく薙刀や鉄の棒が置いてあるので驚き尋ねると、この辺は盗賊が多いので用心に備えてあるのだと言い、僧の身であさましいことだなどと物語るが、いつかその姿も庵室も消えて(中入)、気がつくと旅僧は野原にいる。丁度居合わせた赤坂の里人からこの地で果てた盗賊の話を聞き、庵主の僧は熊坂長範の霊の仮の姿だったと気付く。旅僧が弔いをすると、長範の霊が昔の姿で薙刀を手にして現れる。霊は生前に牛若と金商人吉次の一行の泊まる旅館を大勢で攻め入ったが逆に斬り散らされ、自分も命を落とした仕方話で物語り、松が根の露霜とともに消えてゆく。

【参考:「能・狂言事典」平凡社、喜多流謡本】