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小説家・蓮生あまね様から、御丁寧なお手紙をいただきました。

2020年6月11日

双葉社の小説推理新人賞を受賞されている小説家・蓮生あまね様から、御丁寧なお手紙と、世阿弥と音阿弥親子を題材にした小説が掲載された雑誌・小説推理を頂きました。金沢に在住の方で、喜多能楽堂とは直接ご縁がないのですが、わざわざ応援メッセージを頂いたことに一同感動いたしました。本当にありがとうございました。ここより感謝申し上げます。ご許可をいただきましたので、お手紙をご紹介させて頂きます。(書影:2019年4月に刊行された初のご著書)

 

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前略
 はじめまして。蓮生あまねと申します。
 突然、このようなお便りをさしあげる失礼をお許しください。
 私はかけだしの小説家で、能楽の大ファンです。
 2014年、中世室町時代を舞台に、能面を題材とした一編『鬼女の顔』で、双葉社が主催する第36回小説推理新人賞を受賞するという幸運に恵まれました。遅筆ゆえ、受賞作をふくむ連作三編を収録した初単行本『去(い)にし時よりの訪人(とぶらいびと)』を、去年の四月にようやく上梓したばかりです
 十五年ほど前、夏祭の薪能で『鉄輪』を見、まったく初めてで詞章もなにも聞き取れないながら、不思議な魅力のとりこになりました。近年は地元の能楽堂に月一回ほど通っています。ここ数年は謡が無理なく聞き取れるようになり、さまざまな所作や囃子の違いなどもわかるようになってきて、ますます楽しみが深まっているところです。
 本当に見れば見るほど面白い。前に見た演目でも、新しい発見がある。
 なにより幽玄のひとことではあらわしきれない、活気のようなもの、とでも言いましょうか。もともと歴史が好きで、能楽の生まれた時代にも興味を持ったのですが、混迷の中世に生まれ、戦乱など、さまざまな変転をへて生き延びてきた能楽は、先が見えないといわれる今の時代にも、見る者に生きる力を与える底力を持っていると感じます。
 そうした魅力を物語の形で少しでも伝えたい。作品を目にした人が、実際の舞台に興味を持って、ひとりでも多く足を運んでくれたら、という思いで書いています。
 現在、新型コロナの流行で演能もことごとく中止となってしまい、寂しい限りです。
 私がいつも拝見しているのは、地元、金沢で活躍する加賀宝生の舞台ですが、毎回、休憩時間や終演後に感じる観客たちの興奮や熱気を思うにつけ、なんの憂いもなく観能を楽しめる日々が戻ることを願い、息をひそめて災いがすぎるのを待っているファンは私以外にも大勢いると確信しています。
 能楽も今、忍耐の時をむかえていますが、なんとか乗り切って、また素晴らしい舞台を見せてください。せめて、そんな思いを伝えたくて、卒爾ながら拙作を掲載した小説推理6月号を双葉社の方より送付させていただきました。
 掲載作品『夢に逢ひ』は新人賞受賞作から続く連作のひとつで、観世流の祖のひとりである音阿弥を主人公とする短編になっています。
 素人の解釈ゆえ作中いたらぬ点もあるかと思いますが、能楽の舞台との再会を心待ちにするファンのひとりからのエールとして、お受け取りいただければ幸いです。
草々

2020年4月28日  蓮生あまね