演目のご紹介

融(とおる)

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旅の僧が都に着き、六条河原の院の旧跡を訪ねると、汐汲みの老人がやって来る。桶をかついだ老人がいうには、ここは左大臣源融の旧邸で、融は奥州塩竈の浦の眺望をしのんで、難波の浦から邸内の池へ海水を運ばせ、塩を焼かせて楽しんだと物語り、懐旧の思いにふける。また老人は僧の求めに応じて見え渡る京の山々を指さして教え、うち興じていたが、ふと思い出して桶で潮を汲むうちに潮ぐもりで姿が見えなくなる(中入)。僧が待っていると、夜半過ぎに融の大臣の霊が昔の姿で現れ、楽しげに舞を舞い、月景色をめでるうちに明け方となり、融の姿は月世界に向かうかのように消え去る。