演目のご紹介

雷電 替装束(らいでん かえしょうぞく)

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比叡山延暦寺の座主法性坊の僧正が仁王会を執り行う夜すがら、地方官庁の太宰府に左遷されて憤死した菅公の亡霊が訪れる。僧正は幼く、身寄りとてない菅公を養った親であり、師であった。久しく会わないことを文章に述べ表したのち、菅公の霊は、自分は雷となって、生前、自分を冷淡な待遇をした宮廷人たちを蹴り殺さんと思うが、異変にあたって僧正が内裏に召されたら、それには応じてくれるな、と懇願する。僧正は二度までは謝絶するが、勅使が三度に及ぶときは力なし、と答えるや菅公の霊は形相すさまじくやわに本尊の供物の柘榴(ざくろ)を噛み砕いて妻戸に吐きかけ、たちまちそれが火炎となって燃え上がると僧正は鑁字(ばんじ)『水』の印を結び、菅公の霊は、火炎が消える煙の中に姿を消した。(中入)案の定、僧正は内裏へ召され、法華普門品を読誦するおりから、暗雲とざし雷鳴とどろき、雷と化した菅公が現れる。紫宸殿、清涼殿、弘徽殿と、祈る僧正と鳴る菅公は、追いつ追われつもみあううち、ついに法力に屈したが帝は「天満大自在天神」の称号を贈り、菅公はこれまでなりと虚空に消え失せるのだった。後場、一畳台が地謡前と脇正面に出され、紫宸殿などの内裏の建物を表す。雷と僧正がこれを渡り合う。