演目のご紹介

車僧(くるまぞう)

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いつも牛がなく破れ車で往来しているので『車僧』と呼ばれている僧が雪の嵯峨野、西山の麓に着き、車を留めて雪景色を眺めていると山伏姿の愛宕山の天狗(太郎坊)がいた。太郎坊は車僧に人生の苦悩、輪廻の境地からまだ脱却していないではないかなどと魔の道に引き込むために禅問答をしかけるが軽くあしらわれる愛宕山の太郎坊の庵室に来て魔の道から悟りの道に入れと叫び黒雲に乗って去る(中入)。アイ狂言の溝越天狗は車僧を笑わせ隙をつくる。やがて太郎坊は天狗の姿で現れ「魔道にも心を寄せよ」と誘惑し、「行くらべ」を促すが、牛もいないのに動く車を操ったりする車僧にことごとく失敗する天狗は、彼の威力に恐れをなし、「あら尊や恐ろしや」と魔障を和らげ合掌して消えうせた。 脇座に作り物の椅子車を据え、車僧はその中で微動だにしない。自在な天狗の動きと静と動の対比を見せる。

【参考:「能・狂言事典」平凡社、喜多流謡本】