演目のご紹介

清経(きよつね)

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源平の戦で西国へ都落ちした清経の邸には、妻が寂しく留守を守っている。そこへ夫の自殺を知らせる使いの粟津三郎が来て、遺髪を届ける。あきらめきれない妻は、死者に形見を手向け返すことにするが泣き伏した妻のうたた寝の枕元に、清経の霊が現れる。妻は戦死か病死ならともかく、自分を置き去りにして自殺をするとはと恨み嘆くので、夫は死の動機を物語って慰める。清経は追われる者の焦りと苛立、無益な抗戦への懐疑から、ついに死を決心し、ある夜、月を仰いで愛用の笛を吹き念仏を唱えて舟端から身を投げたのだった。21歳のことだった。死後、霊は修羅道に落ちて苦しんでいたのだが、念仏の功徳で成仏することができた。

【参考:「能・狂言事典」平凡社、喜多流謡本】